赤い狼 参





あぁ、許してしまった。



自分から、受け入れてしまった。



今更後悔しても遅いのに、何故か後悔が胸の中に広がる。




…待って。

これは本当に後悔なの?


後悔…じゃないかもしれない。


後悔じゃなくて…―――







きっと、この胸に広がる黒いモヤモヤとした感情は後ろめたさだ。



隼人が居るのに、棗とキスしたから。





…隼人から貰った指輪を付けている私を時々、隼人が優しい顔をして見ていたから。



…隼人が優しい顔をして見ているのは、私なのか、指輪を付けている私なのか分からない。



でも、あの愛おしそうに何かを見つめている目は好き。




だからかな。


それを裏切ったみたいで嫌になる。



…そうか。





これが、罪悪感って言うんだな。






頭の中を整理している間にも、棗と私の唇は繋がっている。




しかも、始めよりも、もっと深く。





「…んっ、はぁっ、」




長い間のキスが終わって大きく空気を肺に送り込む。




…これがイケナイ事だって分かってる。



でも、棗と居ると心が落ち着く。




…これは…――――――










何?











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