赤い狼 参
二人には多分…いや、絶対。
誰にも言えないような"何か"があるんじゃないかな。
それはきっと、直ぐには消えない、黒い塊。
私には…少し分かるかもしれない。
いや…もしかすると私と一緒かも…?
…………いや、馬鹿な。
「分かる訳…ないよ。」
あの日、私は全てを捨てたんだ。
その時点で、私は助かってはいけない人間なの。
だから…
だから、せめて隼人と棗だけは暗い闇から助けてあげて。
心の中で、居るかも分からない神様に祈る。
私の時は駄目だったからこの願いは叶えてよ。
お願い…
どうか。
そう祈りながら窓の外を見る。
あぁ…月が綺麗。
「月…綺麗だな。」
「うん…。綺麗な満月…。」
月を眺める隼人を見てから、月を見る。
私はそのまま、綺麗に輝く月を隼人とずっと見上げていた。