赤い狼 参
いや、痛いよ。
普通に痛いよ。
隼人の指、私の頬にぶっ刺さってるよ。
いててててっ!と声に出すと、隼人はフンッと勝ち誇ったように鼻で笑ってソファーに座った。
こいつ…私の頬が変形したらどうしてくれんだ。
頬を優しく擦る。
あぁ…明日、頬が青か紫になってないか心配だ。
明日そうなっていたらやむを得ず湿布を貼るしかないな。
あぁ、最悪。
「もう、最悪だよね。隼人君は。」
「もう、ぃぃ加減にしてほしいぞ。こっちは。」
ブツブツと一人で隼人の文句を言っていると、隼人が私を呆れた様子で見てきた。
はぁ、分かりましたよ。
やればぃぃんでしょ。やれば。
どっこいしょっ!と掛け声を掛けて立ち上がる。
「お前、"どっこいしょ"って…じじぃかよ。」
何か変なツッコミ聞こえたけど気にしない、気にしない。
性別越してたとか気にしないよ、私は。
心を無心にしながら床に散らばっている破片をほうきで掃く。
あぁ…これは大変そうだ。
フゥッと小さく、息を吐き出す。