赤い狼 参

「ちょっ、隼人！」




後ろから高い声が聞こえる。



でも敢えて聞こえないフリをして、稚春の腕を引いて歩く。




ったく、イラつく。



稚春の腕を掴んでいないもう片方の手で頭をｸﾞｼｬｸﾞｼｬと掻きむしる。




棗に襲われかけるわ、連にキスされるわ…



マジ、勘弁してくれ…



こっちは我慢してるっつーのによ。




はぁー…




大きくため息をつく。



「…隼人？私、隼人に何か気に障るような事した？」



俺の顔を覗き込むように見てくる稚春。


あぁあ…


だから…




「稚春は危機感ってもんが足りねぇんだ。」



「へっ？」




勢いよく後ろに振り向いて呟くと、稚春は何を言われたのか分かってないらしく、目をパチクリとしていた。



あ、ヤベェ。



止まりそうにねぇ。




口を開くと稚春に俺のイライラをぶつけてしまいそうだから、これ以上稚春に文句を言わないように口を閉じて再び前を向く。




稚春に八つ当たりなんてしたくねぇ。