赤い狼 参
「クソッ。」
小さく呟いて誰も使ってない部屋へと入る。
「此所って…?」
「誰も使ってねぇ部屋。」
歩く速度が遅くなった稚春の腕を強く引いて部屋に無理やり連れ込む。
「わわっ、」
俺に腕を強く引かれたせいでバランスを崩した稚春が俺に倒れ込んできた。
すかさず稚春を抱き止める。
「あ。ごめん、ありがと。」
「…、あぁ。」
ふわっと笑ってお礼を言ってきた稚春に、思わず見とれる。
だから、危機感無さすぎなんだって。
自分の容姿の良さをもっと自覚しろ。
稚春には言わずに心の中でそう呟く。
どうせ言ったって
私なんかが可愛ぃとか言っちゃいけないよ。
とか言うんだろ。
本当、無自覚。
俺の後ろで部屋の中をキョロキョロと見渡しながらはしゃいでいる稚春を横目で盗み見する。
確か、この部屋は何故かアンティーク物の家具が置いてあったな。
それで騒いでんのか。
稚春にも可愛ぃ面があるんだな。と、頬が緩む。
「隼人!これ可愛ぃよー。」
「あぁ。今、そっちに行く。」