赤い狼 参
手に何かを持ってこっちに近付いてくる稚春を見ながらガチャリ、鍵を掛ける。
途中で誰かが入ってきたら嫌だからな。
…いや、いやらしい事はしねぇぞ?
ただ、話を邪魔されたくねぇだけだ。
「早く、早く!」
「分かった、分かった。」
俺の腕をグイグイ引いてくる稚春の頭をポンポンと軽く叩いて稚春に付いていく。
「ねぇ、これ可愛くなーい!?」
俺の顔を覗き込みながら興奮して喋る稚春を見て、思わず笑みが溢れた。
「え。隼人、どうしたの?」
「や、ちょっとな…。稚春があまりにも興奮して喋るもんだからよ。
可愛ぃな、と思っただけだ。」
フッと笑って稚春を見る。
…って、は?
「おい、どうした?」
稚春を見て、焦る。
だって、稚春の顔が…
「真っ赤だぞ。」
「う、煩い。隼人が可愛ぃとか言うからでしょ!あっち向いてて。」
俺が本気で大丈夫かと心配して、今度は俺が稚春の顔を覗き込んで見ていると、稚春は恥ずかしそうにして顔を背けた。