赤い狼 参
「はぁ…。分かった。話すよ、全部。」
祐は諦めたように深いため息をつくと、肩を竦めてやれやれ。と手を上げて首を振った。
「本当に…?」
「あぁ。本当だ。稚春には敵わねぇな。あんなに見つめられたら俺が折れるしかねぇだろ。」
眉をハの字にして私の頭をクシャクシャと撫でる祐。
あ。これ、懐かしいな。よくこうしてもらってたっけ…。
久しぶりの祐の温かさに、思わず顔が綻ぶ。
「じゃぁ、話して。祐、こっち座って。」
私が座っているソファーの横を指さすと、祐は
はいはい。
と言って私の横に腰掛ける。
「…今まで何処に居たの?」
「ん?ずっと遠い所。」
「真面目に答えてよ。」
「ハハッ。分かった分かった。」
白い歯を覗かせて笑う祐の横顔を見ながら頬を膨らませる。
「もう!今まで何処に居たの!」
「んな怒んなって。
……俺が家を出ていった時には、もうこの街に居たよ。この街なら、なんとか暮らせそうだったし。」
急に真剣な顔をして話し始めた祐につられて、私も頬を膨らませるのを止めて祐の横顔を見つめる。