赤い狼 参
すると
「あ…、えっと…何処に行くの?」
少し俯きながらそう呟いた。
…何だ、コイツ。
……可愛ぃにも程がある。
今すぐ抱き締めてぇ感覚に襲われるが、そこはグッと我慢した。
「ただ、稚春の横に座るだけだ。何処にも行かねぇよ。」
そう言って稚春の頭を二回、ポンポンと叩くと稚春は安心したように笑った。
マジで可愛ぃ。
「…何だ?」
横から視線を感じて顔をそっちに向けると稚春と目が合った。
「…や、さっき何で怒ってたのかな、と思って…。」
今度は気まずそうに俯く稚春。
…初めて逢った時も思ったけど、稚春ってよく表情がコロコロ変わるよな。
つぅーか俺、稚春に腹立ってたんだった。
すっかり忘れてたな…稚春にキスしたからか?
…って、俺は変態か。
自分でも少し引いた。
…そういえば。
「何で稚春、棗のスウェット着てたんだ?」
昨日から疑問に思っていた事を稚春に質問する。
自分の着替えとかあっただろうが。
時々泊まる事があるんだからよ。