赤い狼 参
「…馬鹿。」
怒る気にもなれなくてガックリと肩を落とす。
…これだから天然はよぉ。
「稚春、服は自分の持ってこい。」
取り敢えず、もうこんな事が起きないように稚春に注意する。
俺が警戒してても稚春が警戒しねぇと意味ねぇんだよ。
肩をガシッと掴み稚春の目を見つめると、稚春は分かった。と頷いた。
まぁ、これで一先ずは安心だ。
それより…
「お前には警戒心っつーもんがねぇのか。」
前から思っていたが、こんなにも警戒心がねぇとは。
俺は読み違えたみてぇだ。
「警戒心?」
俺の言った単語が分かってねぇのか首を傾げる稚春。
は?こいつ、こんなんも分かんねぇのか?
「警戒っていうのは言葉のまんまだ。猫が気に食わねぇ奴に威嚇するようなもんだ。」
「いや、知ってるよ?」
困ったように笑う稚春。
「じゃぁ何で警戒心に?付けたんだよ。」
「それは警戒するような人達なんて《SINE》に居ないから、警戒しても意味ないのに何で警戒心持たなくちゃいけないのかな、と思って。」
大きな目をパチクリとする稚春。