赤い狼 参
…その発言に俺が目をパチクリだ。
警戒する人物が居ねぇ?
警戒心が必要ねぇ?
……………
「お前は馬鹿だ!」
無性に腹が立つ。
「はぁ?何で馬鹿って決めつけられなくちゃいけないのよ。」
馬鹿と言われた事が気にくわなかったのか、稚春が眉を少しつり上げる。
「馬鹿じゃねぇか。《SINE》に警戒する奴が居ねぇとか言いながら色んな奴にキスされてんじゃねぇか。」
「あれは不意討ちだったんだからしょうがないじゃない。
大体、そのキスの相手には隼人も入ってるじゃん。」
稚春はキッと俺を睨んでくる。
でも、そんな睨みなんて通用する訳がねぇ。
なんたって俺は《SINE》の総長なんだから。
「稚春は俺の彼女じゃねぇか。」
キスして当たり前だ、というニュアンスを含んでそう告げると、稚春はさっきよりも強く睨んできた。
何で稚春が怒ってんのかがさっぱり分からねぇ。
怒りてぇのはこっちなのに。
はぁー。と大きくため息をつくと、ソファーに座っていた稚春はいきなり立ち上がって叫びだした。