赤い狼 参
:警戒心
よしよし、と隼人の大きな手が私の頭を優しく撫でる。
その温もりが心地よくて、ずっと触れてほしいと思う。
泣く私を宥めるように私の頭を撫で続ける手に、安心する。
そして暫くすると、さっきまで流れ出ていた涙はいつの間にか止まっていた。
それに気付いた隼人が私の体を少し離して私の顔を覗き込むようにして見てくる。
「やっと止まったな。」
そう言ってフワッと笑った隼人に見とれた。
「…あ?俺の顔に何か付いてる?」
隼人の顔をジッと見つめる私の視線に気付いた隼人が眉間に皺を寄せる。
「や…、その。……何でもない。」
"隼人が笑った顔がカッコよくて見とれてた"
なんて言える訳無いじゃん。
「…あ?ちゃんと言ってみろ。」
眉間に皺を寄せながら、元々私と隼人の距離が近かった距離を隼人はもっと縮める。
…ち、近すぎじゃない?
その近すぎる距離に戸惑う。
「なぁ?稚春。」
顔をグッと私に近付けてきた隼人が私の耳元で色っぽく囁く。