赤い狼 参
ただ、珍しかっただけでしょ。
隼人を目の前にしても、目の色変えてキャーキャー言わなかった私が。
ほらね。結局、皆自分の痛みには敏感で人の痛みには鈍感なんだ。
だから毎日、女達に私が呼び出されてるの知ってても何も言わないんでしょ?
その時は見てみぬフリ。
結局、"勝手にやってろよ。"みたいにしか思って無いんだろうね。
でも、そうかと思いきや急に優しくなって。
何?その時見てみぬフリをしていた罪悪感を消したくて優しくするの?
本当、自分勝手だよね。
………でも。
嫌いじゃないよ、そういうの。
だって、私だって同じだから。
面倒臭い時は見てみぬフリ。
自分にとってプラスにならなかったら気付かぬフリ。
自分にどうにもできないと思ったら直ぐに現実から目を反らす。
それで、ぃぃ。
そっくりだね。似た者同士だね。
《SINE》の皆と私は。
「…―――稚春?」
不思議そうに私の名前を呼ぶ隼人と目が合う。
「何?」
それに気付いた私は隼人に微笑み掛ける。