赤い狼 参





そして、そんな隼人の様子を私が首を傾げたまま見つめていると



「こっちに来い。」



手を差し伸べてきて。




そんな隼人の手を私は躊躇もなく握る。



すると隼人は満足そうに微笑んで



「んなぁ!?」



私の体を軽く持ち上げた。




すっぽりと私の体は隼人の腕に包まれる。


シトラスの香りが鼻を掠める。

その匂いはもう匂い慣れた隼人の香水の匂いで。



何故か隼人がいつもより近くに居る気がして口元が緩んだ。





「…その色気の欠片もねぇ反応はどうにかならねぇのか?」



はぁ。と隼人が私の耳元でため息をつく。



すると、さっきまで緩んでいた口元が止まって。




そんな事は私じゃなくて違う女に求めれば?


塚、そんな事思うんだったら私じゃなくて違う女連れてくればぃぃのに。




テンションが一気に下がっていく気がした。



「あっそ。」



何だか気に食わなくて素っ気ない態度をとる。



「何で怒ってんだよ。」



そんな私の態度に今度は隼人が気に食わなかったらしく、眉間に皺を寄せる。



本当、将来何もしなくても眉間に皺の跡が残るんじゃないだろうか。





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