赤い狼 参
そんな事を思ってしまう程隼人は眉間に皺を寄せていて。
…多分、隼人に出逢ったばかりの私だったらこの隼人に恐怖を抱いただろう。
でも、少なからず出逢って半年は経っている私にはそんな顔は通用しない。
機嫌が悪いんだな、ぐらいにか思わなくて。
「別に。」
相変わらず素っ気なく答えると隼人はあからさまに舌打ちをした。
…隼人の方が怒ってるじゃん。
「隼人こそ、何で怒ってるの?」
素直に疑問に思った事を口にした。
思った事は口にしろ、ってこの前《VENUS》に遊びに行った時、祐に言われたから。
珍しく祐の言う事を守ってみようかな、と思った。
「分かんねぇの?」
そう言い放った隼人の瞳が少しずつ怒りの色に染まってきて。
「分からない。」
「本当か?考えろよ。」
正直に分からないと言ったら考えろよ、って。
考えても分からないって言ってるのに。
隼人の言い方に少しムッとしたけど、言い返したら隼人がキレてしまう可能性が高いから、しょうがなく口を閉じる。