赤い狼 参
――パタン――
「ふぅー…。」
リビングのドアを閉めて、深く息を吐く。
これは動揺の表れなのか、それとも、驚きの表れなのか。
…多分、どちらもだろう。
最近、忙しくて切る間がなくて伸びた前髪をパサリと後ろに掻きあげる。
「あの子…かな。」
自分でそう呟いた後、自然と頬が綻ぶ。
最近、連が俺によく笑ってくれるようになった事と、会話が増えた事。
その要因は稚春ちゃんだったのかと思うと、頬の緩みをどうしても抑えきれなかった。
俺にとってとても嬉しい事だが、時折、連をそうさせた要因は何なのかと
気になり尋ねるけど絶対に話してはくれずにいつも、別に。の一言で原因が分からなかった。
それが、こんなにも簡単な答えだったのだと知ると、俺は凄くスキップしたい気分に駆られた。
「恋、ねぇ。」
そういえば、俺が連くらいの歳の時に麻美(あさみ)に出逢ったんだっけ。
ボーと天井を見つめる。
麻美とは、連の実の母親で昔、俺と連を捨てて他の男の所に行ってしまった俺が唯一愛した女だ。