赤い狼 参
すると男の人はまた
おぉお。
と感動したように声を上げて
「稚春ちゃん、ありがとな。」
嬉しそうに笑った。
「え…、はい。料理は得意なので…。」
それが、なんだか嬉しかった。
人に感謝されるってぃぃな…
なんて思ってしまった。
駄目だ、そんな事を考えちゃ。
目をギュッと瞑る。
「あの、冷めない内に食べて下さい。美味しいかどうかは分かんないんですけど…。」
自信なさげに男の人を見ると、男の人は
「美味しいに決まってるじゃないか!」
と言って食べ始めた。
……なんか、緊張する。
「…どう…ですかね?」
恐る恐る男の人を見ると…
「えっ、」
切なそうに、笑っていた。
「不味かった…ですか?」
不安になる。
味が濃すぎた?
塩の加減が駄目だった?
グルグルと頭を回転させていると
「いや、思い出してね。」
男の人は何処か遠くを見るような目をした。