赤い狼 参





「あなたは、優し過ぎます。」




男の人の目を真っ直ぐ見つめると



「よく言われる。」



男の人はフッと柔らかく笑った。



でも。



私は…




「そうやって人の心配ができる人って素敵だと思います。」




また男の人の目を真っ直ぐ見つめると



「…ありがとう。」



男の人は優しく笑って私の頭をポンポン、と軽く叩いた。




「稚春ちゃんも素敵だよ。」



「え、いやいや。そんな事ないです。」



「いや、素敵だ。」




急に意味不明な事を言わないで下さい。


と言いたい所だけど…



目が嘘を言ってない感じで、何も言えなくなる。




「私には素敵と言える処なんて無いです。」



「あるよ。」




何を根拠にそう言ってるんだろうか。



本当に、この人は分からない。




「無いですよ…。」



「何で。あるよ。そうやって敬語がちゃんと使える処とか、


俺の心配ばかりしている処とか、本当は足が痺れる程痛かったのに連を起こさなかった処とか。」




…別に、普通じゃないのだろうか。





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