赤い狼 参
『思い出したのか聞いてんだよ。』
「あぁ、そゆ事。いや、悪いけど全然思い出せない。」
『…。』
「だから、教えて欲しいんですけど…。」
無言になった拓磨におずおずと話し掛けると
『ピランルト・タウンに行く為に週2で《VENUS》に来る約束はどうなったんだ。』
お前は馬鹿だという雰囲気を漂わせながら口を開いた。
………………
完っ全に忘れてた。
ヤッベェ。ヤッベェよ、私。
このままじゃ私、マジで拓磨に殺されるよ。
いや、マジで。
焦って目をキョロキョロとさせていると拓磨はそんな私をまた、まるで見ているかのように喋る。
『今から稚春を迎えに行かすからな。』
「え『拒否権なんてねぇ。』」
いや、まだ何も言ってないんだけど。
いや、早いから!
と拓磨に見える訳がないのに頭をブンブンと横に振る。
『逃げたら……分かってるよな?』
「はい。大人しく従わせて頂きます。」
怖い怖い。駄目だ、拓磨には敵わない。
今一瞬、黒笑顔が見えた気がするんだけど。