赤い狼 参
「や、そんな事言っても何も出ませんよ。」
「いや、知ってるから。つぅーか、マジで言ってるんだけど。」
そう言ってフッと微かに笑う朋さんを見て、そんな事を平然と言える朋さんはやっぱり、タラシだな、と思ってしまった。
「朋さん、やっぱりタラシでしたか。」
ポツリ、今思った事を口に出す。
すると、その言葉が朋さんには気に入らなかったみたいで(いや、当然なんだろうけど。)、
あ゙?
と低く、言葉を溢した。
「稚春、何つった?」
「え?今の口に出してました?」
「出てねぇと思ってたのか。思いっきり口に出してるぞ。」
「…ま、本当の事を言っただけだし、ぃぃじゃないですか。見逃してー。」
ハハハハッと笑いながら弘さんを見ると、朋さんにギロッと睨まれた。
うわぉ。超怖い。
危険を察知した私は、朋さんからなるべく離れるようにドア側に体をくっつけて弘さんを横目で盗み見する。
「…んだよ。」
「いや、怒ってるのかな?と思っただけです。」
視線を朋さんが握っているハンドルに移しながらそう言うと朋さんはあからさまに鼻で笑った。