赤い狼 参





「何でぇ?」




困惑しながら朋さんを見つめる。



そして、目が合った朋さんの視線は


どうした、何があった?


って聞いてくれているみたいで。




「朋さん…。」




そして、何でか知らないけど朋さんに助けてほしくて。



心が苦しくて。



気が付いたら朋さんの首に腕を回して抱きついていた。





「…稚春、向こう行くか?」



「うん…、連れてって…。」




私が言葉を発したと同時に、朋さんが私の体を持ち上げた事によって体がフワッと浮く。




「稚春さん…。」



「大丈夫ッスか?」




優吾と慶吾が心配そうに私を見てくる。




「うん、大丈夫…。」




そんな二人に私は弱々しく答えるしか出来なくて。




申し訳ないな、と思いながらも朋さんの胸に顔を埋めると




「わりぃ、なんて思わなくてぃぃ。」




朋さんの優しい声が頭に響いた。




「…うん。」




皆、何処までも優しい。




そう思ったらまた涙が出てきて。




これ以上心配掛けたくない私はさっきよりも強く、朋さんの胸に顔を埋める。






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