赤い狼 参
「しっかり掴まっとけ。」
そう言って私の体を少し強く持った朋さんは皆に
「わりぃ、また後でな。」
と言って私を奥の部屋へと運ぶ。
「朋さん…。」
ごめんなさい。と言おうとして顔を朋さんの胸から少し離したた私の頭を、朋さんは強い力で自分の胸にまた埋めた。
「謝罪なんていらねぇ。謝んなら、礼の方がぃぃ。」
な?と私の頭上から聞こえてくる朋さんの声はさっきと同じように優しい。
「あ…りがとう。」
なんて優しいんだろう。
声が、私を運んでくれている手が、朋さんの全てが…
私を落ち着かせようとしているのが、心配しているのが分かる。
それに、また私が泣きそうになってグスッと鼻をすすると
「もう泣くな…。」
決して強い口調ではなく、優しい、優しい声で私を宥める。
「ん…。」
朋さんの顔が見えなくても分かる。
きっと今、凄く悲しそうな顔をしてるんだろうな。
朋さんは優しいから。
そう思うと、涙が自然と止まった。