赤い狼 参





そして、暫くの沈黙の後



「稚春、歩けるか?」



朋さんの声が上から降ってきた。




「歩ける…。」




朋さんの問い掛けに頷くと、朋さんは


わりぃな。


と言って私をその場に降ろした。




「さすがにドアは手じゃねぇと開けれねぇな。」




その台詞を聞いて、部屋に着いたんだと分かった。




「ん。入れよ。」




そう言いながら私の背中をソッと押す朋さんは私に気を使っているのか、私とは目を合わせない。




本当、何処までも優しい人だな…。



朋さんに感動しながら部屋に足を踏み入れる。




そこには、青で統一された部屋が広がっていた。




「此所は…?」



「俺の部屋。」



「え?朋さんの?」




驚く私を他所に、朋さんは


そうだ。


と普通に返事をして机を囲むようにして置かれているソファーに腰をかける。




「稚春、こっちに来い。」




そして、そのまま朋さんの隣に空いたスペースを朋さんはボスボスと叩いて座れ、とジェスチャーをする。






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