赤い狼 参
「優吾と慶吾がね、心の底から笑ってないように感じるの。」
そう言う稚春の目は今までの中で一番悲しそうな顔をしていた。
それを見て、なるほどな。と納得する。
稚春は今の優吾と慶吾を見て、昔の自分を思い出しちまって、重ねてしまって悲しくなったんだな。
稚春が、フッと静かに笑う。
「昔ね、私もあんなんだったの。」
そう言った稚春の目は、昔を思い出している様子で遠くを見ていた。
「私ね。昔、色々あって人が信じられないんだ。」
その瞳は、揺れている。
でもね、苦しくて、悲しくて…助けて欲しいって、脱け出したいって思っていた時に、《SINE》の皆に逢ったの。
稚春が俺の方に顔を向けて、優しく笑った。
それに答えるように、俺もニコリと笑う。
「でね、今まで無かった感情や、表現出来なかった事が出来るようになったの。」
確かに、稚春は今日久しぶりに逢ってみて、よく笑うようになったなと思った。
あれは、《SINE》の奴等のお陰なのか…。
フッと稚春に気付かれないように笑う。
俺が、稚春を助けてやりたかったな。