赤い狼 参
右手で自分の髪をクシャクシャと掻く俺の隣で、稚春はまた口を開いた。
「でもね、それって皆のお陰なんだよ。私だけじゃ、何も変わらなかった。」
真剣な眼差しで真っ直ぐ前を見つめる稚春。
「やっぱり誰かの力があって、初めて気付くものって沢山あると思う。」
そんな稚春の横顔をジッと見つめる。
「私、優吾と慶吾を助けたい。」
強くそう言い放った稚春の目は、真剣で。
こんなに稚春は強かっただろうか。
「朋さん。」
ゆっくり俺へと顔を向ける稚春。
それによって俺と稚春の視線が交わる。
交わった視線に何故か、鳥肌が立った。
「お願いがあるんです。」
真剣な眼差しで俺を見つめる稚春に、俺はゴクッと唾を呑み込む。
「…―――。」
稚春の真剣な話し声と、俺の小さく息を呑んだ音が、部屋に響き渡った。
朋弘side~end~