赤い狼 参
「優悪、どけ。」
なのに、この男ときたら。
優しい優しい、神と思われる優悪の腕を掴んで何処かに退けようとする悪魔拓磨。
本当、悪魔だ。
優悪の"悪"を愛情の"愛"にして、拓磨の"磨"を悪魔の"魔"にしてしまいたい。
目を閉じてそう強く願っていると…
「…じゃぁ、ペナルティだ。」
「ペナルティー?」
拓磨がぃぃ考えが思い付いたという表情で私を見つめてきた。
でも、私は勢いよく後退る。
だって、嫌な予感しかしない。
ジリジリと薄笑いをしながら近付いてくる拓磨。
それから逃げるようにして後退る私。
その様子はまるで、蛇に睨まれているが、後退りが出来る蛙のようで。
私のすぐ側で優魔がブッと噴き出す音が聞こえた。
こら、てめぇ。笑ってんじゃねぇ。
私は大変なんだよ!必死なんだよ!
そんな気持ちを込めて優魔をキッと睨む。
多分、それがいけなかった。
さっきまで肩を震わせて笑っていた優魔が無表情で近付いてきて。
「ぃぃ度胸してんじゃねぇの、稚春。」
ガシリ、肩を掴まれた。