赤い狼 参
「うぅううぅ…。」
「稚春まで壊れたか。」
優悪がこめかみを両手で押さえている。
失礼な。
私の脳は至って健全だっつーの。
「そんなの、反則だぁああぁあ!」
うわぁああ!と半泣きしながらこの部屋を出ていこうとする。
…でも――
「うぇ!?」
ガシッと首の後ろを誰かに掴まれて逃げられなかった。
…塚、最近よくこの"~しようと思ったけど出来なかった"っていうパターン多い気がする。
そんなに私の行動を制御したいのか、お前等は。
首の後ろを掴まれたまま、
はぁ。
とため息を深く溢す。
「何ため息なんかついてんだ。」
多分、私の首の後ろを掴んでる人が喋っているのだろう。
距離が、物凄く近くに感じた。
…っていうか…
「その声は拓磨か。」
そういえば、拓磨さっきから一言も喋ってないな。
途中で優魔に出番取られていじけてたのかな。
ポケーとそんな事を思う。
拓磨ってば、意外と可愛ぃ奴なんだな。