赤い狼 参
だから…だからさ…
「祐、家に戻って来てよ…。」
祐の背中に抱き着く。
祐の体が微かに震えた。
…祐が戻ってきたら大丈夫なの。
何もかも、上手くいくの。
"あの人達"が一番、求めているのは、祐……あなたなの。
私は、必要無いんだって。
「無理…だ。」
暫く時間が経ってから掠れた低い声が頭上からしてきた。
「何で…?」
少し体を祐から離して上を見上げる。
でも、祐の綺麗な焦げ茶色の頭しか見えない。
「…俺があの家を出ていく前に言ったろ。アイツ等にはお前が必要なんだって。俺は必要ねぇんだ。」
祐の言う、"アイツ等"は、私の言う、"あの人達"を示していて。
「…違う。」
「違わねぇ。」
「…っ、違う!あの人達には、祐が必要なんだって!」
「違わねぇ!だから俺は家を出てきたんだろ!」
全身で叫ぶ祐を見て、目を見開く。