赤い狼 参






だから…だからさ…







「祐、家に戻って来てよ…。」






祐の背中に抱き着く。




祐の体が微かに震えた。






…祐が戻ってきたら大丈夫なの。



何もかも、上手くいくの。




"あの人達"が一番、求めているのは、祐……あなたなの。




私は、必要無いんだって。






「無理…だ。」





暫く時間が経ってから掠れた低い声が頭上からしてきた。




「何で…?」



少し体を祐から離して上を見上げる。




でも、祐の綺麗な焦げ茶色の頭しか見えない。





「…俺があの家を出ていく前に言ったろ。アイツ等にはお前が必要なんだって。俺は必要ねぇんだ。」




祐の言う、"アイツ等"は、私の言う、"あの人達"を示していて。





「…違う。」



「違わねぇ。」



「…っ、違う!あの人達には、祐が必要なんだって!」



「違わねぇ!だから俺は家を出てきたんだろ!」




全身で叫ぶ祐を見て、目を見開く。






< 33 / 410 >

この作品をシェア

pagetop