赤い狼 参
:怖いひと
ピタリ、私と司との目が合う。
私はそのまま何かに固定されついるかのように、固まったまま司を見つめる。
「司。」
学がそう言うと、司という男はそのまま私から学へと視線を向けた。
「学、サンキューな。」
「あぁ。」
フワリ、司は学に優しく笑いかける。
その瞬間、司の周りに花びらが散った気がした。
「稚春。」
そして、私に視線を戻した司が低い声で私を呼ぶ。
「は、い…。」
なんだか言いようがない緊張に追われる。
「俺を覚えてる?」
「…?」
突然質問してきた司に、首を傾げる。
私は逢った事無いと思うんだけどな…。
でも覚えてる?
って言われたし…。
「やっぱり覚えてないか。」
暫く考えていると司が残念そうに呟いた。
何故だかその様子を見て司に申し訳なく思う。