赤い狼 参





「ごめんなさい…。」




眉毛を下げる。



何で謝っているのか分からないけど、謝らないといけないような、そんな気がした。




「謝んなよ。」




すると司は椅子から立ち上がり、私に一歩、また一歩と近付いてきた。




緊張が走る。




「学、もうぃぃ。」




私をジッと見ながら歩みを止めないまま、司は学にそう言い放つ。




その言葉を聞いて不安になる。



その言葉はこの場から離れろという意味を表している。


それくらい私にも分かった。




それじゃあ私と司だけになる。

それだけは避けたい。





こんなに威圧感を放って、学に微笑む表情とは全然違う私に向ける無表情な顔は




怖い。





一人にしないで欲しい。




そんな想いのためか、気付かない内にギュッと学の服の裾を掴んでいた。




すると学は大丈夫とでも言うように私の腰に添えていた手に力を入れた。






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