赤い狼 参
言葉が出なかった。
逃げようかと思った。
目の前に、
一番逢いたくて、
でも、
一番逢いたくねぇ奴が居たから。
「稚春…?」
そう口に出すと、目の前に居る見覚えのある顔が、歪んだ。
あぁ。ヤベェ。
泣いちまいそうだ。
グッと唇を噛み締める。
「ゆ…うお兄ちゃ…ん」
その懐かしい声が俺の耳に入ってきた途端、体が自分でも分かる程、大きく、震えた。
「祐っ!」
泣きながら俺へと一直線に走ってくる顔を見て、確信する。
あぁ、やっぱり稚春だ。
7年間、逢いたくて、逢いたくて仕方なかった…
「稚春…。」
俺の好きな女。