赤い狼 参
つーちゃんとはあれから逢っていない。
でも今、目の前に居るのはつーちゃんの面影がなんとなくある司。
そう、司は10年前、突然私から姿を消したつーちゃん本人。
逢えるなんて、思っても無かった。
嬉しいよ、本当に。
外も、中も変わってしまったけれど嬉しい。
司の顔を見てフフッと笑うと、司が顔を思い切り顰めた。
「何笑ってんだ。」
「いや、逢えたのが嬉しくて。」
「そうか。」
短い返事をしながら司が私の上から降りて、私に手を差し出す。
「…?」
何その手。という感じで首を傾げると司がチッと舌打ちをした。
「お前は馬鹿か。」
「…はぁ?」
本日二度目の馬鹿。をくらって少しイラッときた。
「意味分かんな「稚春。」」
司に罵ろうとしたら後ろから名前を呼ばれた。いや、正式に言えば頭上からだ。
「あ、学。」
学に
いつまでそこで寝転がってる気だ。ほら、掴まれ。
と腕を引っ張られる。
「だって、これは司のせいだもん。」
何でそこで私が怒られるの、と頬を膨らませば私の頬を学が両手で潰した。