赤い狼 参
"お前に期待などしていない。"
俺にそう言い放ったのは、確か、俺の実の父親。
今でも、時折思い出す。
あの、憎たらしい性格の悪そうな顔。
性格が顔に滲み出てるって。
あの家に居た時から、そう思っていた。
毎日、毎日、同じ罵声を浴びせられる。
…うるせぇ。
お前だって要らねぇ。
お前だって誰にも必要とされてねぇよ。
母さんを見てみろよ。
あれは、お前が好きで一緒に居るんじゃねぇ。
金の為に一緒に居る。
金の為に結婚した。
そう、顔に書いてあるじゃねぇか。
毎日、そう、思っていた。
罵声を浴びせらている時、たまたま母さんが通り掛かった。
普通の母親だったら、止めてくれるよな?
でも、そんな事せずに、アイツ、鼻で笑ったんだ。
私には、関係無い。みたいな顔して。
そん時、思ったんだ。
あぁ、俺の居場所は此所じゃねぇ。
もっと他にある。
俺を必要としてくれる場所が、俺の居場所が、きっと他にある。って。