赤い狼 参
だから、戻る訳ねぇじゃねぇか。
つぅーか、お前が居るから大丈夫だって。
"アイツ等"は、俺より稚春の方を必要としてんだから。
なのに、何で"違う"とか言うんだ。
違わねぇ。違わねぇよ。
俺は必要ねぇんだよ。
分かってくれよ。
"アイツ等"が、
態度で。
言葉で。
そう、言ったんだって。
だから、もうそれ以上何も言わないでくれ。
「俺は必要ねぇんだよ!」
全身で叫ぶ。
体が、脳が、悲鳴を上げる。
もう、"アイツ等"の話なんか聞きたくねぇよ。
吐き気がする。
………っ…。
ふと、背中に温かさを感じた。
腹ら辺を見ると、細い、色白の手が俺に巻き付いていた。
…稚春か。
無意識に自分の手を稚春の腕に滑らせる。
懐かしい、稚春の温かさ。
目を閉じて、稚春の温かさを感じる。
あぁ、稚春だ。
俺が7年間、消そうとしても、消えなかった…
稚春だ。