赤い狼 参
その後、俺が家を出ていった後、稚春があの家でひでぇ扱いをされていた事を聞いて、無性に腹が立った。
でも、一番腹が立ったのは、あの日、家を出ていった俺に、一番腹が立った。
何で、もう少し我慢出来なかったんだ。
もう少し、我慢してれば。
俺は確かに、稚春の為に家を出ていった。
邪魔者が居なくなれば、稚春は幸せに暮らせる。
稚春には、幸せになってくれねぇと困る。
俺の好きな女だから。
俺は稚春の"兄貴"だから、幸せにはしてあげれねぇから。
幸せにしてやるのは俺ではなくてぃぃから。
誰かが、幸せにしてくれればぃぃんだ。
あの日、その"誰か"に"アイツ等"を選んだのがいけなかったのか?
でも、俺が要らねぇ奴なら、稚春は必要な奴なんじゃねぇのか?
"アイツ等"には、俺も、稚春も要らなかったって事か?
…何だそれ。お前等何様だよ。
拳を強く、握り締める。