赤い狼 参
それから《SINE》に帰って…
「稚春、逃がさないよ?」
危機的状況です…。
「…はははははっ。棗、恐いよ。目が笑ってないよー。」
「稚春?」
「…はい。」
「何で俺が怒ってんのか分かる?」
「…。」
「分かんねぇの?」
恐い。マジで恐い。
棗、本気的な感じですかねぇ…。
棗の視線が痛い。
バシバシと当たってる。
塚、突き刺さってる。
…でも、何で棗が怒ってるのかが分からない。
……私、何か悪い事した?
「…分かってねぇんだ。稚春、そのリングの意味、分かってる?」
棗は顎で私の左手の薬指を指す。
「…このリングの意味?」
「あぁ。知ってる?」
棗は、真剣な眼差しでさっきと同じ事を質問してくる。
「…うん。知ってる。総長の彼女って意味でしょ?」
「うん。一つ目の意味はそれ。もう一つは?」
「もう一つ?」
「うん。もう一つの意味。そのリングの意味、一つだけじゃないんだ。もう一つあるんだ。知ってる?」
少し笑う棗。
その笑顔に、少しドキッとした。