赤い狼 参
「ところでさぁ、稚春。何で俺等が必死に稚春の事探したか知ってる?」
棗は気付いているのだろうか。
表情は笑ってはいるけど、目が笑っていない。
…恐い。
「知らない。」
「…そう…。じゃぁ、隼人が《VENUS》で稚春に怒った事も、何で隼人が怒ったのか分からないって事だよね?」
コクッと頭を縦に振る。
嘘を吐いたら本当に棗に殺されそうだ。
棗の目が、それを物語っている。
「そっか。でも、俺等が必死で稚春を探してた理由なら、さっき稚春に教えたよ。」
「…え?」
いつ、教えた?
塚、棗、いつそんな事言った?
「…リングの話、したでしょ?」
「あ…。」
そういえば、その時何か言ってた気がする。
確か…
「《SINE》が守る姫…?」
確か、そう言っていた筈。
でも、《SINE》が守る姫って意味が分からない。
"《SINE》が"って、ここの《SINE》全体の事…?
「ちゃんと聞いてくれてたみたいだね。」
棗は少し安心したように笑う。