赤い狼 参
一瞬、目を見張った。
半年前、出逢ってから一度も、こんな目を、顔を、した処を見た事は無かった。
いや、見せてくれた事が無かった。
と言うべきだろうか。
しっかりと、覚悟を決めたような表情をした稚春を見て、少し嬉しくなった。
やっと、俺等と向き合ってくれる気持ちが出来たんだな。と。
そう思うと、顔の筋肉が緩んだ。
案の定、
「棗…私、真剣なんだけど。」
稚春は拗ねたように頬を膨らませてこっちを睨むようにして見ていた。
だって、稚春が俺等を理解してくれようとしてくれているから。
だって、稚春が俺等ともっと関わろうと、近付こうとしてくれているから。
嬉しくて、感情が抑えきれないんだよ。
「ごめん。嬉しくて。」
「へ?」
「…何でもないよ。……稚春、本当に聞く?《SINE》の、俺等の全て。」
「うん。聞く。」
稚春は、さっき拗ねてた顔とは打って変わって真剣な表情をする。
本当に、ぃぃんだね?
これを聞いたら、もう後戻りは、出来ない。
逃がさないから。
…俺は、真剣に俺を見つめる稚春に《SINE》の全てを、俺等の全てを話す事にした。