赤い狼 参
棗の部屋にズカズカと入って繋いでいた手を放し、真っ先に向かったのは、棗のベット。
そこに行くなり、倒れ込むようにしてうつ伏せに寝転ぶ。
「こら、折角可愛ぃ格好してるんだから着替えてからにしなさい。
着替えたら好きなだけゴロゴロしてもぃぃから。」
棗が少し困った感じだけど呆れた顔をしてベットに寝そべっている私に手を差し伸べる。
「はぁーい…。」
なんか、言い方がお母さんみたいだな。と思いながら棗の掌を掴む。
…お母さんが家に居たらこんな感じなのかな。
少しだけ棗にお母さんの雰囲気を感じて泣きたくなった。
でも逆に嬉しぃ気持ちも湧いてきた。
それは棗がこの服装の事を可愛ぃと言ってくれたから。
この格好、私じゃないみたいで嫌だな。と思っていた私でも可愛ぃと言われれば嬉しい。
それに、《SINE》の皆が言ってくれなかった言葉を棗が言ってくれたというのが更に嬉しい。
やっぱり、棗はぃぃ人だ。
例え、似合ってなくてもそういうお世辞が言えるのだから。
まぁ、お世辞じゃなくても、お世辞でも、褒めてくれれば誰だって嬉しいものだ。
「ほら、これ着て。」
グシャグシャになった私の髪を左の手櫛でとかしながら右手で私に着替えを渡してくる。
あぁ。
落ち着くなぁ。
涙が出そうになって目を固く閉じる。
「じゃぁ俺は外に出てるから。着替えたら知らせて。」
「うん。分かった。いつもごめんね。」
「何が…?」
「いつも迷惑掛けてごめんって事です…。」
不思議そうな顔をする棗に申し訳ない気持ちで俯く。
本当、いつも何もかもしてもらってばっかりだよ…。