モデル同士の恋
「だって颯太借りてくから!」



そう言って結衣は俺の手をとり、
さっき閉まったばかりのドアを開けて
そのまま走り出す。



「ちょ、…え!?
おい…」

俺は訳がわからないまま結衣に手を引かれ走る。


何、が起こってる、んだ?

事態が飲み込めなくて、混乱する俺。


しかし俺の混乱をよそに結衣はただひたすら走り続ける。


しっかりと俺の手を握ったまま。


もちろんその手を降りきることも
結衣に逆らって止まることもできた。


でも、久しぶりに感じた
結衣の手の温もりを
手放したくはなかった。


これからどんなことを言われようとも。


今はこのまま、温かい気持ちでいたい。


もう少しだけ、このままでいたい。



でもそんな俺の思いも虚しく、すぐに公園についてしまう。


昔よく遊んだ、小さな滑り台しかないとても小さくて古い公園。


この辺に住んでる子供はこの近くの他の子供もたくさんいる大きな公園に行ってたから、俺たちはここで遊ぶとき、いつも貸切状態だった。



それが妙に俺達には嬉しくて、いつもふたりでここに来てた。


そんな長年楽しんだ公園も今では多忙の毎日で久しぶりだった。


懐かしい、な。


今日も例外になく、人っ子ひとりいない。



俺は結衣に引かれるまま奥の本当に小さな砂場のまえまでいく。



そこで結衣が手を離したかと思ったら、
肩を思いっきり押され、
急に砂場に落とされた。



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