嘘婚―ウソコン―

*忘れられない存在

帰り際。

『Cinderella』の玄関に、千広と陽平とハートとユメの４人がいた。

彼らの前にはタクシーが止まっている。

先ほど、ハートが呼んだタクシーだ。

「ヒロちゃん、大丈夫？」

ユメが心配そうに声をかけてきた。

「陽平、かなり酔ってるけど」

ハートも心配そうだ。

そんな２人に対し、千広はすっかり酔っ払ってしまった陽平をタクシーに押し込んだ。

水割りを３杯飲んで酔っ払ったのだ。

ハート曰く、陽平は相当なまでにお酒に弱いらしい。

「大丈夫です、ちゃんとお送りしますから」

心配そうな顔の２人に千広は返事をした。

「まあ…右腕のヒロがそう言うなら、心配はないんだろうけど…何かしてきたら腕の骨１本くらいへし折ってもいいからね」

グロスがたっぷりと乗った真っ赤な唇は笑っているハートだが、大きな目は笑っていなかった。
< 130 / 333 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop