嘘婚―ウソコン―
「何を?」

「えっと…小田切紅花さんって、有名なんですか?」

本当にわからなくて質問をしただけだった。

なのに、それまで作業をしていた陽平の手がピタッと止まった。

楽しそうにしゃべっていた口も動きを一緒になって動きを止めた。

まるで珍しいものでも見たと言うように、陽平は目を丸くしている。

千広は突然陽平が止まった理由がわからなかった。

何か変なことを言っただろうか?

「…はっ?」

陽平の唇から出てきた言葉は、それだった。

「ヒロ、知らないの?

小田切紅花って、超がつくくらいの有名人だよ?

若い子なんか特に知っててもおかしくないと思うんだけど」

続けて陽平が言った。
< 145 / 333 >

この作品をシェア

pagetop