嘘婚―ウソコン―
携帯電話で時間を確認すると、12時を過ぎていた。

「周さん、12時を過ぎてます」

千広が時間を伝えると、
「そりゃ、腹も減るか」

こちらに視線を向けると、陽平は困ったように笑った。

それからヨッコイショと呟いて、陽平は腰をあげた。

「お昼はマックでいい?

ヒロはそのまま作業を続けて、俺は買いに行くから」

黒いリュックを肩にかけた陽平に、
「じゃあ、チーズバーガーをお願いします」

千広は注文した。

「セット?」

そう言った陽平に千広は首を縦に振ってうなずいた。

「んじゃ」

陽平は右手をあげると玄関へ向かった。

ドアが閉まったのを聞き終えた瞬間、落ちていた携帯電話を見つけた。

「またかよ…」

千広はそれを拾いあげた。
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