嘘婚―ウソコン―
しかし、腹の虫はそんな単純な行動に騙されない。

グーッ

1度鳴り出したら止まらないうえに、質が悪いものだから困った。

千広は仕方なく躰を起こした。

外で陽平の帰りを待つとするか。

千広は息を吐いて、玄関へと足を向かわせた。

クーラーがよく効いたこの部屋を離れて暑い外に行くのは嫌だが、そこは我慢するしか他がないだろう。

千広はドアを開けた。

熱気がクーラーで冷えた躰を包み込んだ。

その時だった。

「くるなって言ってるだろ」

陽平の声が飛んできた。

自分のことを言われたと思ってドアを閉めようとしたら、
「きたっていいじゃない、あたしの勝手なんだから」

誰かの声が入ってきた。
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