嘘婚―ウソコン―
「ちょっと…」

呼びかける彼女を振り返ることなく、陽平はこちらに向かって歩いてくる。

「あたし、あきらめないから!

何回も追い返されたって、絶対にあきらめないから!」

そんな陽平の背中に向かって、彼女は叫んで言葉を投げつけた。

それにも答えることなく、陽平は無視して歩いた。

千広は慌ててドアを閉めると元の場所に戻った。

今の今まで作業を続けていたと言う風に装っていたら、ドアが開いた。

千広は気づかないフリをして作業を続ける。

マックのいい匂いが近づいてきても、千広は作業を黙々と続けた。
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