嘘婚―ウソコン―
「おう、ただいま」

声が聞こえて、陽平が顔を出した。

「おかえりなさい」

千広はたった今気づいたと言うような顔をすると、陽平を迎えた。

「いやあ、昼飯時のマックに参ったよ。

すごい混んでるんだから」

おおげさに息を吐くと、陽平は床に腰を下ろした。

「へえ、そうだったんですか」

果たして、うまく答えられているだろうか?

あんな場面を見たから、不自然になっていないだろうか?

「安いのはわかるけど困ったもんだよ」

ハハッと笑いながら、陽平は紙袋を千広に渡した。
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