嘘婚―ウソコン―
「――ちょっと…!」

立ち去ろうとする陽平を千広は呼び止めた。

「聞いてもいいですか?」

そう言っても、陽平は振り返ろうとしない。

「あたしの戸籍を盗んで、夫婦になったのは…そのためだったんですか?」

千広は1番聞きたかった質問を投げた。

再び沈黙が2人の間を流れた。

「――さあ、な…」

沈黙の後で陽平が答えた。

「とりあえず、誰でもよかった。

俺と夫婦になってくれるなら、女は誰でもよかった。

そこにヒロがいたから、なったまでだ」

陽平は、何を隠しているのだろうか?
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