嘘婚―ウソコン―
何が何なのか、わからなかった。

「苦しめばいいと思った…?

相手を苦しめたいから夫婦になってください…?

――ふざけんな、バカ…!」

膝が地面についたのと同時に、両手で頭を抱えた。

陽平が何を隠しているのか。

陽平が何を抱えているのか。

陽平が何を考えているのか。

もう何もかもわからなかった。

「――戸籍を盗まれて、勝手に妻にされたこっちの身にもなれっつんだよ…」

声が震えて、情けない。

怒りたいのか、泣きたいのか、悔しいのか。

自分の今の感情がわからない。

そして、陽平そのものもわからない。
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