嘘婚―ウソコン―
その人は後ろに顔を向けると、
「ぼたんちゃーん!」

大きな声で誰かを呼んだ。

「はいはーい」

そう言って現れたのは、男だった。

男と言うよりも、何だろうか?

躰が男にしては細過ぎで、吹けば飛んで行ってしまいそうな感じだ。

軟弱と言うか、頼りなそうと言うか…一言で言うならば、“男”と言う言葉はこの人には似合わないと千広は思った。

「何でしょう?」

声も高いから男とは言えない。

「ハートを呼んできてくれるかしら?」

「はい、わかりました」

ぼたんは返事をすると、小走りでホールへ向かった。
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