嘘婚―ウソコン―
それから千広の方に視線を向けると、
「あの子、アタシの秘書なの。

ちょっと頼りないけど腕は一流よ」
と、言った。

うふっと笑ったその顔は、まさに女である。

同じ女である自分よりも女らしいと、千広は思った。

「アタシはくるみ、ここ『Cinderella』のオーナーよ」

その人――くるみが言った。

「小堺千広です…」

自己紹介をされたので、千広も言った。

(やっぱり、あたしの人生は周さん中心で回っているんじゃないかしら?)

千広はそう思った。

「ヒロ1人でくるなんて、陽平に何かあったんでしょ?」

まだ本題に入ってないと言うのに、ハートは一瞬で理由を見抜いた。

さすがキャバ嬢、甘く見るものではない。
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