嘘婚―ウソコン―
 * * *

それは、5年前の夏のことだった。

その日、陽平はある会社の令嬢と見合いをすることになっていた。

「娘の美樹です」

相手の父親に紹介されたのは、小柄な女の子だった。

「美樹は19歳、陽平さんの3歳下です」

父親が笑って娘のことを紹介している間、当人である彼女――美樹はつまらなさそうな顔をしていた。

(退屈なんだろうな)

美樹のつまらなさそうなその顔に、陽平はそう思った。

せっかくの休日がお見合いになってしまったんだから、退屈で退屈で仕方がないんだろう。

陽平が感じた彼女の第一印象は、自分と気があいそう――陽平は美樹にそんな印象を抱いた。
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